ウルトラQ 〜Another Story〜
卑弥呼のツルギ
(序) 中国山地、竜伏山山中で2000年近く前のものと思われる遺跡が発見された。 ただちに千里ヶ丘大学の星教授をリーダーとする発掘チームが編成されて遺跡の徹底解析が始まった。 遺跡内には石造りの巨大な箱状の物体が埋められていた。いくつかの年代特定法によって、やはりこれは卑弥呼が邪馬台国を治めていた時代とほぼ同じ頃のものであろうと断定された。 邪馬台国の謎を解き明かすための手がかりが期待される中、星教授ら考古学のエキスパートによるさらなる徹底解析が続けられた。
(一) 「淳ちゃん、すぐ飛んで。行き先は・・・」 毎日新報の記者江戸川由利子が星川航空の事務所に駆け込んできた。 「ホイきた。竜伏山だね」 由利子が両手で広げ持つ地図に目もくれず、チーフパイロットの万城目淳は左手の人差し指を由利子の顔にむけて得意げに言った。 「アラ、なんでわかったの?」 「今先輩と話してたところなんだよ。『石室にミイラ。邪馬台国に敵対した王のものか?』って記事を読んだのさ。他社に先を越されてデスクに大目玉をくらった由利ちゃんがもうすぐ駆けこんで来るぜってな。あはははは」 見習いパイロットの戸川一平までが得意げにライバル社の朝刊を広げて見せる。由利子はブーっと頬をふくらませてふたりを睨みつけた。 「いじわる!わかってんのならさっさとヘリを出してよ。さあさあ急いだ急いだ!」 口に運ぼうとしていたコーヒーカップを由利子に取り上げられ「おい」と文句を言う万城目だったが、由利子の剣幕に押されてしぶしぶチェアから立ち上がった。
由利子たちは山中の遺跡発掘現場近くに設えられた仮設テントの中にいた。星教授ら発掘チームのほかに大手新聞社と地元紙の記者が約十名、万城目や一平もちゃっかりもぐりこんでいる。由利子のはからいであった。 今日は星教授自身による説明会の後で、クレーンによる石室の開封を公開することになっている。 説明会は定刻に始まった。星教授はまだ45歳。度の強そうなメガネをかけてはいるが、その全身からは若く精力的な印象を受ける。好きな仕事に打ち込めることが楽しくて仕方ないのだろう。 天を突くようなクレーンが唸りを上げ、地中からビルほどもある巨大な石室がゆっくりと吊り上げられた。 おお、とプレスから感嘆の声が上がった。実際に目にする迫力は想像以上のものだったのだ。パシャパシャとシャッター音とフラッシュの光が交錯した。 「遺跡から出土した巨大な石室は私たちの推測通り棺でありました。中に安置されていた遺体は既に公開したとおりです。大変身分の高い、恐らくは一国の王ではなかったかと考えてられており、私たちは現在あらゆる電磁波や細菌から隔絶されたカプセルに安置して調査を重ねています。さてあの石棺はふたつの部屋に仕切られていて、驚くほど精密かつ厳重に密閉されていました。これを見て下さい」 星教授はモニターに映し出された石棺の拡大映像を指した。 「蓋になにか貼られていますね。まるで封緘紙みたい」 由利子のひとりごとに星教授は大きく頷いた。 「私たちもそう考えています。ただ不思議なのは、本来もっとも大切であるはずの王の遺体が収められた小さな石室ではなく、おそらく副葬品が収められているであろう大きな石室の方に何故この封印がなされているのかということなのですよ」 星教授はあごをなでながら語った。 「なるほど。しかしこれは・・・何というか・・・」 「まるで二度と再びこの蓋が開かれぬことを願うような緊迫感が漂っていませんか?」 一平の言葉を継いで、星教授が胸の不安を口にした。 「まことに謎多い石棺ですが、今日これより実際にこの石棺を開封しすべてを明らかにします。皆さんにはその立会人になっていただきたい」 星教授の合図で発掘チームの助手が特殊な液体を封緘紙にふりかけた。 数分後、封緘紙がハラリとはがれるように落ちた。 その瞬間・・・ ガアアアアアアアアア! 重い石棺の蓋が粉々に砕け散り、中から巨大な怪獣が出現した。
(二) ガラガラガラガラ 「う・・うわあああ」 おびただしい土砂が降りかかってそのタクシーは急停止した。 側溝にタイヤを落とさぬよう辛うじてハンドルをきったドライバーは、恐怖にひきつった顔で恐る恐るドアを開けて首から上を車外に出した。 「ど・・・土砂崩れだ」 見上げた先は奈良県の県道わきにある柏岡古墳である。一説では邪馬台国ゆかりの古墳ではないかと言われている。日本で最も古い古墳のひとつである。 その古墳の頂きが突如崩壊しはじめたのだ。 「えらいことだぞ」 見ると古墳の頂上部分から何かが突き出してくる。 「あれは・・・柱?」 確かにそれは柱のようだ。ただしとんでもなく大きい。電信柱を数本束ねたほどもある太い柱が、地の底から何かに押し上げられてくるかのようにニョキニョキと伸び続けている。 ゴゴゴゴゴゴ 柱が伸びるに伴って地鳴りとともに土砂がさらに崩れ落ちる。 「おおおおう?わわわ!」 ドライバーはペタンと路面に尻餅をついた。 巨大な柱は古墳のいただきから約20mも露出するとようやく停止したが、今度は何かのスイッチが入ったかのように発光しはじめた。 おそらく石造りなのであろうが、表面は上質の大理石のようにスベスベしている。ただ不思議なことにどこにも継ぎ目らしきものが確認できない。 ブゥゥゥゥン 古墳から天を突くように伸びた不思議な石柱は、モーター音のような低い唸りをあげはじめた。 「もしもし、もしもし・・・携帯電話が通じない。なんでだよ畜生」 110番に連絡しようとしたドライバーの携帯電話は完全に機能を停止させていた。
出現した怪獣は体長22m。四つ足で素早く移動する。鋭いキバとツメが武器なのだろう。加えて頭頂部と背には古代の戦士が使ったと言われるトゲ付の棍棒のごときスパイクが無数に生えている。攻撃にも防御にもすぐれた白兵戦士と言えるかも知れない。 オオオオオオオオオオ 天にあげた遠吠えは、いにしえに与えられたターゲットに向かっての宣戦布告であったのかもしれない。 怪獣は石室が埋められていたこの地をしばらく離れようとはしなかったが、それでも何かを探しているかのように右往左往しはじめた。森の木々をなぎ倒し、谷に渡されたつり橋を引きちぎった。 そうして1時間以上にもわたって一帯を荒らしまわった怪獣は、やがて顎を前足の上に乗せると活動を停止させた。
「ほほう、ではこの巨大な柱と中国山地の怪獣出現はほぼ同じ時刻であったというわけじゃな」 柏岡古墳は邪馬台国にゆかりがあるとされているため宮内庁が管轄している。怪現象発生に慌てた宮内庁から東京の一の谷博士が現地へ緊急招聘されていた。 柏岡古墳と謎の巨大石柱が見える位置にある地元の建設会社に事務所を提供してもらい、解析のための最新機器を持ち込んだ一の谷博士は、精力的に怪事件の解明に取り組んだ。 そのさなか事務所の固定電話が鳴った。竜伏山の由利子からであった。 奈良県での怪事件発生と一の谷博士の出馬をデスクから聞かされた由利子が連絡してきたのだ。そして竜伏山で起こったことの仔細を聞き終えたところであった。 かたや一の谷博士は、自らが持ち込んだ機器による調査で石柱から強力な磁力線のようなものが放射されていることが判明したと由利子に伝えた。 「ふたつのできごとには何か深い関わりがあるような気がするね。もしかしたらこの磁力線は遠く中国山地にまで伸びているのかもしれないよ」 してみると、先日からニュースでも報じられている関西から中四国一帯の携帯電話の不具合はこの電磁波による影響なのかもしれない。由利子が博士の事務所の固定電話へ連絡してきたのもそのためだったのだ。 <星教授は、現代まで眠りについていた怪獣がどこからエネルギーを摂取しているのか大変不思議だとおっしゃっていました。ひょっとしたらその磁力線と何か関係が?> 「・・・由利ちゃん、どうやらこれは竜伏山の星教授と足並みをそろえる必要がありそうだね」 <ええ、おっしゃる通りです。私からもこのことを星教授にお伝えします> 「うむ。よろしく頼むよ。それと、できれば万条目君に私を迎えに来てもらいたいのじゃが。いずれにしてもすべてのヒントはそちらにありそうじゃ。取り急ぎ、怪獣の封印されていた石室の封緘紙に書かれている文字の解読に全力をあげねばならぬじゃろうな」 一の谷博士は受話器を置くと豊かな白い口ひげをなでながら、窓の外で発光しつづける謎の石柱を見上げた。
(三) 怪獣の名は封緘紙に書かれた文字から推測された。〜厳つい牙を持つ龍〜という表記から厳牙龍(ゴンガロン)と名づけられた。 ゴンガロンは石室から出現した後何かを求めるかのように西へ東へ山中を彷徨い続け、現在はその動きを止めたままである。しかしいつまた活動を再開させるかわからぬ上、そこからわずか数キロ先には高速道路や山間の集落がある。一応住民たちの避難は完了しているものの、一刻も早く手を打たなければ被害の拡大が懸念される状況だ。 星教授たちによる封緘紙の文字の解読が急がれていた。
記者たちの前に星教授と一の谷博士が並んで現れた。 ゴンガロンによる森林被害が出ている竜伏村の役場の会議室である。 「やぁ皆さんお待たせしました」 一の谷博士が切り出した。 「まだ完全というわけではないが、例の封緘紙に書かれていた謎の古代文字の解析結果のあらましをお伝えしようと思います」 一の谷博士の目配せに頷いた星教授が後を引き継いで話し始めた。 「二世紀頃この一帯を治めていた国はかつて邪馬台国と敵対しており、ゴンガロンと命名されたこの怪獣は邪馬台国から敵であるこの国の王に向けて放たれた刺客であるということが判明しました」 記者団がどよめいた。 「刺客・・・つまり敵国の王ひとりを葬るためにこんな凶暴な怪獣を送りつけたというのですか?邪馬台国は」 「左様。邪馬台国から派遣されたゴンガロンは、この国の王ひとりの命を狙って暴れまわった。しかし逆に考えれば、邪馬台国はこの国そのものを抹殺しようとは考えていなかったということですな。しかし王が逃げ惑うにつれてゴンガロンによる被害も大きくなる一方であったため、困ったこの国の民たちは王を一旦巨大な石室に隠し、ゴンガロンをその隣にこしらえたさらに分厚い石室におびき寄せて封印したのです」 「なるほど、王様をエサにしたネズミ捕りってわけだ」 一平のひとりごとは会場中に聞こえたため、あちこちで笑い声が起きた。 「ちょっと一平君、不謹慎よ」 由利子のひじでわき腹を突かれて一平は「いけねぇ」と頭をかいた。 「ははは、君の言うとおりだよ」 星教授は穏やかに笑うと説明を続けた。 「さて怪獣をうまく石室に封印したまではよかった。ところがいざ王を石室から助け出す段になって、万一ゴンガロンが石室を破ってふたたび地上に出現することを恐れ、結局王を石室に閉じ込めたままゴンガロンもろとも地中深く埋葬してしまったのではないでしょうか。それによってゴンガロンは王を殺害することができないまま石室に閉じ込められ、眠りについたのでしょう。ゴンガロンはおそらくなんらかの方法で邪馬台国から送られてくるエネルギーを受けながら活動していたのではないかと推察されますが、それも精密に密閉されたこの石室によって遮蔽されてしまい、やがて活動を停止したまま今日に至ったのでしょうな」 ここで星教授は用意されていたペットボトルの水をひとくち飲んだ。 「奈良の柏岡古墳から放射されている電磁波は間違いなくゴンガロンに届いており、あれこそが一種のエネルギー供給装置なのではないでしょうか?この点において柏岡古墳を調査なさった一の谷博士と私の意見は一致しております」 星教授と一の谷博士は互いを見交わして同時に頷いた。 「で、星教授。肝心のゴンガロン退治ですが何か方策はあるのですか?」 万条目の問いに、集まった記者たちは皆一様に頷いた。邪馬台国の謎よりもゴンガロン対策こそが現在最も重要な課題である。 「今回発見された王のミイラをゴンガロンに差し出してみようと思います」 「えっ?」 星教授の意外な言葉に、記者全員が驚いて身を乗り出した。 「待ってください星教授。せっかく発見された世紀の大発見をみすみす怪獣に食べさせちゃうんですか?」 由利子の言い分はもっともだ。少なくとも研究者なら、この王のミイラは絶対に失いたくない掌中の珠であろう。それを・・・。 実際星教授の表情も重苦しい。 「今なにより大切なのは、人々の生活を怪獣被害から守ることです。しっかりとした資料調査をせず、邪馬台国への強い憧れだけで不用意に石室の蓋を開けてしまった私たちの責任は重大です。研究よりもまずゴンガロン退治を最優先事項とします」 星教授の言葉に、記者たちから拍手があがった。誰だって古代の古墳から生きた怪獣が飛び出すなどと考えはしない。星教授たちの行動を責めるのは酷というものだろう。 「ここで考えられるのが柏岡古墳から出現した例の巨大な柱です」 説明は一の谷博士にバトンタッチされた。 「あの柱からの電磁波が常にゴンガロンに向けて放射されていることは先に申し上げましたな。私はあのシステムがゴンガロン退治に一役買っているのではないかと考えています」 「つまり、あの電磁波はゴンガロンにエネルギーを送るものであると同時に、目的を達した後ヤツを倒すためのシステムも兼ねているということですか?」 「その通りです。残念ながら具体的にどういう手段でゴンガロンを倒すのかはまったくわかりませんがね」 2000年も昔の超科学が何を見せてくれるのか。はたしてゴンガロンは王のミイラを破壊した後卑弥呼の思惑通り退治されるのか。 今はとにかく星教授と一の谷博士という日本を代表する頭脳が出した推論に従うほかはなかった。
(四) 王のミイラが遮蔽カプセルから出されると同時にゴンガロンは活動を再開させた。 ふたたび咆哮をあげるや、まっすぐに王のミイラが安置されているポイントへ向けて移動し始めたのだ。 「やはりかかりましたな、星教授」 ゴンガロンのようすは地上班と高空のヘリ班によって撮影され、ライブ映像が送られてくる。 役場の会議室で一の谷博士と星教授はことの成り行きを見守っていた。前夜に何度も何度も打ち合わせを繰り返した作戦である。 星教授は無線のマイクを手に取った。 「誘導作戦、はじめてください」 <了解> 応えたのは万条目だ。卓越したヘリコプター操縦能力をかわれて一の谷博士から直接依頼されたのだ。 王のミイラを横たえた担架をロープで吊り下げた星川航空の小型ヘリは、ゴンガロンが迫り来る方角をさして離陸した。
ガアアアアアア! 森の間からゴンガロンがジャンプして、ヘリが吊り下げた担架のわずかに下で恐ろしいキバがガチリ!とかみ合わされた。 「おっと!」 ―――あぶない、あぶない。 万条目は微妙な高度を保ちながらゴンガロンを巧みに誘導していった。 卑弥呼が用意した怪獣の退治方法がどのようなものかわからぬ以上、このような森林地帯ではなく、ある程度拓けたエリアへ誘導したほうが安全だろうという一の谷博士の進言によるものである。 山中を流れる川が石灰岩の大地をV字に抉って造った深い渓谷へとヘリは進入した。 ミイラを置くポイントが見えてきた。地上班によってあらかじめ周囲の安全が確認され、発炎筒が焚かれている。 万条目は発炎筒のすぐ近くにミイラを担架ごと下ろすと、ヘリと繋いでいたロープをほどいた。 ゴウウウ! 背後の山かげからゴンガロンが姿を現した。 2000年もの間追い続けた標的が目の前にいる興奮からか、後ろ足だけで立ち上がるやいきなりスピードをあげてヘリへ襲いかかった。 「あ、あぶない!」 「淳ちゃん!」 「先輩!」 会議室で悲鳴があがった。ゴンガロンの巨体で一瞬カメラからヘリの姿が消えた。 由利子がかたくつぶった目を恐る恐る開くと、ゴンガロンの右肩のあたりから高度を上げる星川航空のヘリコプターがモニターに映し出された。 「よかった。淳ちゃん無事なのね」 「当たり前だい。先輩が操縦してるんだから」 一平も急に威勢が良くなった。 「そうね、一平君だったら哀れ怪獣の下敷きに。一巻の終わりだったけど」 「ひどいよ由利ちゃん」 軽口をたたくふたりを尻目に、一の谷博士はモニターにかじりついている。 「ミイラは?ミイラはどうなっとる」 <こちら万条目。ゴンガロンは王のミイラを前足で押さえつけています> 先に映像を送ってきたのは地上班であった。 万条目の言ったとおり、ゴンガロンは前足のツメで担架ごと王のミイラをガッチリと押さえつけている。 ゴオオオオオオオオン。 ひとこえ啼くと、その名が示すとおりの鋭いキバでミイラを一気に噛み砕いた。
同時刻。 奈良県柏岡古墳の石柱がぼっこりと倒れ、その穴から一条の光が迸り、天空に奔った。 光は雲をつきぬけるといずこかへと姿を消した。 そして・・・。
はるかな天空から光が降ってきた。そして衆人環視の中、ゴンガロンの首の辺りに交差した。 ガッ! 一瞬体を硬直させたゴンガロンは四肢を力なく折り曲げてガクリと地面に崩れ落ちた。 おお! 状況を見守る全員が歓声をあげた。 そして天空から飛来してゴンガロンに到達した光が徐々にその輝きを失ってゆく。 「これは!」 一の谷博士と星教授が顔を見合わせた。 それは巨大な剣であった。古代に製造されていたといわれる銅剣だ。しかしその全長は約10mもある。 その巨大な剣は、鉄壁の防御を思わせるゴンガロンの堅いトゲの鎧の隙間を狙って見事に突き刺さっているではないか。その切っ先はゴンガロンの喉元を貫いて地面にまで達している。 だらりと舌を垂らしたゴンガロンは、2000年もの間狙い続けてようやく引き裂いた王のミイラに抱きつくように倒れて絶命していた。 ボワッ! 突如剣が青白い炎を発したではないか。 「ああっ、剣が!」 剣から発せられた炎はまたたく間にゴンガロンの全身を包み込み、王のミイラもろとも灰になるまで焼き尽くしてしまった。 「燃える。怪獣もミイラもすべて!なにも・・・残らないのか」 さすがに星教授は無念このうえないといった様子だ。 「星教授、ここが片付いたら柏岡古墳へ行きましょう。少しでも邪馬台国や卑弥呼の謎を解くヒントが得られるかもしれませんよ」 同情した一の谷博士が、がくりとテーブルに両手をついてうなだれる星教授の背をやさしくなでた。分野は違えども、同じ研究者として彼の無念は手に取るように理解できた。 「それにしてもとんでもなく執念深い装置ですね、博士」 由利子の言葉に一の谷博士も深く頷いた。 「国を統一せんとする執念。そしてこのような怪獣を生み出し、自在に操る超科学の力・・・卑弥呼という人物、まことに恐るべき女王であったといわざるを得ない」
〜約2000年前、倭国を統一せんとしていた邪馬台国は既にありません。現代の日本を卑弥呼が見たなら何と思うでしょう。もしかしたらかの女王は、倭国が堕落し腐敗しきった時に目覚めて倭人すべてを屠るための怪獣を、どこか潜ませているかもしれません。〜 (完) |