池田憲章さん講演会

「脚本家・金城哲夫〜特撮とドラマを初めて融合させた人」

2011年2月27日(日) 14:30開演  於:北島町立図書館・創世ホール


失礼ながらぱごすけは池田さんという方を今回の講演会チラシを拝見するまで存じ上げませんでした。しかし「日本SF作家クラブ会員」「特撮リボルテック勤務」など、スゴイ肩書きが並んだプロフィールから、この講演会がどれほど素晴らしい企画であるかが伺えました。そのうえ「宇宙船」や「スターログ」「アニメージュ」などぱごすけが愛読していた雑誌にも寄稿しておられたとのこと。

スゴイ方ではないですか。

そのスゴイ方がウルトラ者として敬愛してやまぬ金城哲夫さんについて語ってくださる・・・これは何をおいても拝聴しにゆかねばなりますまい。

エレベーター脇にある案内です。
手作り感満載ですね♪♪当日の会場はぱごすけ同様初期ウルトラに心酔したオールドファンの方々が集結していました。おそらく300余人のキャパを持つ3階多目的ホールはだいたい6〜7割くらいの入りだったように思います。

金城さんを語る・・・というと、どうしても沖縄との関わりや晩年の苦悩なんかについての考察も出るかと思っておりましたが、お話はもっぱら金城さんの円谷プロ在籍前後、特撮作品の創作活動を重ねておられる頃の事情をご紹介くださる内容でした。

時にはつい昨日のことを思い出すかのように、時には手元に用意した資料を確認しながら一言一句正確に・・・池田さんの語り口は、まるで親しい友人に話しかけるようにもの静かなのですが、金城さんはじめ初期ウルトラに関わった方々の姿が活き活きとこちらに伝わってきます。

まず、池田さんご自身が「ウルトラマンA」以降の作品に強い違和感を覚え、ウルトラとはなんぞや?というテーマでもって「よみがえれ円谷プロ」という “ウルトラ論”を自作なさったこと。(ああ、わかるなぁ。その気持ち。初期ウルトラを知ってしまった者にとって、ウルトラの父や母の存在、ウルトラ兄弟の概念は、やはり・・・言葉は悪いけど・・・ “強引な急ハンドル” であったと言っても過言ではないと思います)

金城さんがSFドラマの先駆「トワイライト ゾーン」の脚本家ロッド・サーリングにインスパイアされたこと。(当時サーリングがTV局の招きで来日した折の講演会に金城さんもかけつけたそうです。サーリング曰く “SF特撮ドラマというものは、文化や風習の違いを乗り越えてどこの国でも楽しめるものであるべし。” とおっしゃったそうです。まさにウルトラの原点ですね)

TBSの栫井プロデューサーから圧倒的な信頼を得、円谷プロにおいて全権プロデューサー的立場を与えられながら、当の栫井氏や円谷一監督らから、その信頼ゆえのハイレベルなリクエストを出され、切羽詰った挙句、当時近所に住まっていたという藤川桂介氏のアパートに転がり込んで泣いたこと。

金城さんが書く脚本の出来にいつも満足していながら、なぜか決して自らメガホンを取ろうとしなかった円谷一さんが「1/8計画」を読んだとき初めて「この作品は是非自分が!」と言い、2本撮りであったため「自分用にもう一本すぐに書け」と言われた金城さんが速攻書き上げたのが「宇宙からの贈りもの」であったこと。(物語が終わろうとする時間帯に新たなナメゴンが一の谷研究所で出現した時、石坂浩二さんのナレーションで “ぶった切るように” この物語は終了した。と池田さんはおっしゃいました。しかし池田さんは決してけなしているのではなく、ナレーションひとつで日常と非日常をつなぐ見事な手法として紹介してくれました。池田さんはどうやらこの作品が特にお好きなのではないか、という印象を受けました。)

そして、なにより金城さんの書く脚本には読むだけで絵コンテを脳裏に投影せしめるビジュアル重視型手法と、前述のウルトラQ「1/8計画」などに代表される人間ドラマの奥深さが備わっていること。(ひとことで言えばオモシロイってことですよね)

などなどなど・・・

長年にわたって築いた業界内外の人間関係とさまざまな資料に裏付けられた楽しい逸話のオンパレードで、非常に有意義な2時間でした。(司会の方がおっしゃっていたように、ひと晩中でもいいから池田さんの引き出しがカラッポになるまでお話を伺いたい気持ちでした)

それにしても、金城さんの最期はあまりにも悲しいですね。(享年37歳・・・なんという若さで!大伴昌司さん36歳、円谷一さん39歳と、日本特撮の黎明期をど真ん中で支えた方々は皆若死にしていらっしゃいます。特撮の神様・・・どうして?)終始おだやかな笑みを浮かべ、ファンとの会話を楽しみながら
丁寧にサインしてくださいました。

今回の講演会を実現させてくださった海野十三の会の皆様、特撮リボルテックや北島町立図書館のスタッフの皆さんに心から感謝申し上げます。

物販コーナーで購入した「金城哲夫研究」4巻購入者への特典スピードくじでは特撮リボルテックさんのご厚意で提供してくださったフィギュアを頂戴しました。(コレ、見れば見るほどよくできています!)またパンフレットには池田さんの直筆サインをいただきました。ファンの方々ひとりひとりと言葉を交わしながら、丁寧にイラストを(ある人にはウルトラセブン、ある人にはゴジラを描いていらっしゃいました。ちなみに私には星川航空のパイロットコンビ、淳ちゃんと一平君を)描いてくださいました。そして「ウルトラQは特撮ワールドの水先案内人でしお母様から寄贈していただいた大伴昌司さんの遺品。
大切な宝物です。た」のひとことも。

そうそう、池田さんは私のパンフレットにイラストを描きながらこうおっしゃいました。『ウルトラQは主な出演者が皆さん今もお元気なのです。これはとても有難いことです』と。

軽いタッチで描かれたこのイラストとサインには、こうした池田さんの「ウルトラQ」に対する、いや素晴らしい特撮番組とそれに携わった方々に対する深く細やかな愛情がこめられているのです。生涯の宝物にします。ウルトラ者の先達にして心の師匠(勝手ながら・・・)である池田さん、有難うございました。またいつかどこかでお話をうかがいたいと思います。

*北島町立図書館には、かつてここで講演をなさった竹内博さんのサイン色紙や、大伴さんのお母様から寄贈された大伴さん所有のウルトラセブンの台本などがなにげに展示されています。ちょっとした「常設・怪獣博士ウルトラフェスティバル」状態となっています。あなどれないな、この図書館。今後はここのイベント情報に網をはっておかねば。

 

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