新仮面ライダーSPIRITS                                仮面ライダーSPIRITS 講談社コミックス

 

講談社ZKCの『仮面ライダーSPIRITS』は、原作の精神 〜SPIRITS〜 を尊重しながら買え!
そして100回読め!!も、我々が夢中になったテレビシリーズの展開に忠実であり、必要に応じて作者(村枝先生)の合理的新解釈を加えるという、かつてない(かつて誰もなし得なかった)離れ業でもって綴られた昭和仮面ライダーシリーズの集大成です。

10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』というたった1本のスペシャル番組を、1号ライダーからの集結エピソードも含むとはいえ、よくもまあここまで膨らませたものだと感心しつつ新刊の発売を待ち望み続けてきました。1巻の発売が2001年でしたから、私の40代の大きな楽しみのひとつであったと言っても過言ではありません。(似顔絵の提出も皆勤賞ですしね♪ うち1回は入選だいっ!)それだけに今年(09年)のマガジンZ休刊はショックでした。

そして、月刊マガジンへの移籍と共に嬉しい新スタートを切った『新 仮面ライダーSPIRITS』。オールドファンのぱごすけにとって最も敬愛する1号、2号の因縁を明らかにする衝撃のエピソードは、まるで忘れ去られた廃墟の中から掘り起こされた貴重な文献のごとき輝きを放っています。時を同じくして東映チャンネルで放映中の『仮面ライダー』ファーストシリーズを見ながらこれを読めば、そのリアリティは何倍にも増幅されてさらに楽しめました。

かつて藤岡弘さんが演じた本郷猛は、ヒーロー特撮作品の主人公にしては少々悲哀感が強すぎると言われたそうです。しかし、その演出は正しかったのです。バットマンやスパイダーマンがそうであったように、仮面ライダーは苦悩のスーパーヒーローです。『新仮面ライダーSPIRITS』第1巻ではその本質が見事に描かれています。“偉大なる”石ノ森先生の創造した壮大なるサイボーグバトルストーリーの正統伝承者として、作者村枝先生に絶大なるエールを贈ると共に、今後の展開に心から期待します。

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さて余談ですが、右図は昭和56年に徳間書店から発売された「タウンムック増刊 仮面ライダー」です。仮面ライダーシリーズ10周年記念なのだそうです。(この当時はスーパー1放映中でした)さすがは特撮の金看板、節目の時には必ずこうした書籍が刊行されていたのですね。(何十回も読み返してボロボロです。迂闊に開くとヤバイ)

資料としても貴重な本書、例えば企画が「仮面ライダー」としてまとまるまでの経緯。第一稿の「マスクマンK」から「仮面天使 〜マスクエンジェル〜」「クロスファイヤー」「十字仮面」「スカルマン」とネーミングだけでもさまざまに移り変わっています。

さらに特筆すべきはキャスティングの検討。「マスクマンK」当時のキャスティングイメージでは、既に千葉治郎さんの名が上がっており、その後「クロスファイヤー」では主役に柔道一直線で足ピアノの超人技を披露した近藤正臣(!)さんが、ヒロインルリ子役では島田陽子さんが内定していたらしいのです。結局最終案「仮面ライダー」になって主役は藤岡弘さんに落ち着き、アクションモノにしてはイメージがおとなしい島田陽子さんを脇にやって、当時エメロンシャンプーのCMで注目されていた真樹千恵子さんがルリ子役に決定したということです。

おやっさん役は当初、やはり柔道一直線での車周作役で人気があった高松英郎さんが有力であったそうですが、かつて「キャプテンウルトラ」が「ウルトラマン」と合同のイベントを行った際に、ムラマツキャップ役であった小林昭二さんと知り合った東映の平山亨プロデューサーが、小林さんの“人間”にほれ込んで是非にとお願いしたそうです。そして小林さんはエピソード内のみならず、若い俳優さんたちにとってもかわらぬ「おやっさん」であり続けられたそうです。小林昭二さん、言わずと知れた「ウルトラマン」と「仮面ライダー」ふたつの特撮金看板にその名を刻む「殿堂入り」級の名優ですね。

そのほか、藤岡弘さんの事故によるスタッフたちの苦悩と迷走、2号ライダー誕生秘話など(コスチュームをもう少し明るいイメージにすること。素手の格闘だけではなくショッカーに武器を持たせること。怪人の最期を爆発にすること!など、現在の特撮作品の基礎がこのあたりで検討されています)読み出すと時間が経つのも忘れてしまう逸話のオンパレードです。(こらこら!ページはそっとめくること!!)