ウルトラQは怪獣の世界

  昭和40年(1965年)1225日 午後4時から15分番組(?)


明るい日差しが家の中に降り注ぐ晴れた日…あれはぱごすけがまだいたいけな幼稚園児だった頃です。まだ若かりしおふくろが、ひとりで遊んでいる私のもとへ新聞を持ってやってきました。

「ぱごちゃん、今度『ウルトラQ』とかいう怪獣の番組が始まるらしいよ。ゴジラやラドンと違う新しい怪獣が毎週テレビに出てくるんだって」

と言うのです。おふくろが見せてくれたその新聞には、ウルトQに関する特集記事が載せられていました。確か怪獣の写真が載せられていたと記憶していますが、何の怪獣だったかは覚えていません。

「ふ〜ん」私は興味をおぼえながらも、それほどの喜びも味わうことなく、また遊びを続けたように思います。

それから何日経ったでしょう?それは突然やって来ました。

 

――何だ?

ビルの掃除夫さんが(あ…晴乃チックだ)暗いビルの中を歩いている。何だかおびえているふうだけど。ん、暗闇から声が? あ!暗闇からぬぅっと怪獣が現れたぞ。他にも怪獣がずらっと並んでいる。現れた怪獣が司会役でいろいろな怪獣の紹介を始めた。あ、そうか。前におふくろが言っていた新しい怪獣の番組だ。

―特番「ウルトラQは怪獣の世界」を、私はこうしてリアルタイムで見ました。(特撮の神様、有り難う!)

司会の怪獣はパゴスでした。この時からパゴスは私の中で、ワンランク上の特別な存在になったのです。

番組の全貌をはっきり覚えているわけではありませんが、Q怪獣が活躍する(暴れる)場面を、本編のダイジェスト形式でいくつか紹介してくれたのは確かです。 一番よく覚えているのはナメゴンです。岩場から現れて人間を追うアノ姿が映し出されていたのをしっかりと記憶しています。パゴスがこう言いましたよ。

「私はこいつの弱点を知っている」

私は、新怪獣にもちゃんと弱点があることに安心したのと同時に、他の怪獣の弱点まで知っているこのパゴスという怪獣、只者ではない。という警戒心が芽生えたのを覚えています。

 

さて、この番組が放映されて約40年、ずっと疑問に思っていたことがふたつあります。

疑問その1:どうして私はこの特番を見ることができたのだろう?今のようにテレビガイドも無い時代…。偶然とはいえ、なぜあらかじめこのチャンネル(朝日テレビ・6ch)にあわせていたのだろう?

疑問その2:この特番の放映データは、昭和40年(1965年)12月25日 午後4時からの15分。と言われています。しかし、私のおぼろげな記憶がどうしてもそれを「違う」と言い続けるのです。

(理由A)放送当日は12月25日?・・・だけどその日の私はクリスマス当日の、華やかな、ちょっと浮いたような気持ちではありませんでした。(子供はこういうものには敏感なのです)

(理由B)どうしても「朝」のイメージがあった。それは家の人たちが皆仕事に出かけていて、家の中が妙に静かで人の気配が無かったこと。データ通りに夕方なら、もうおふくろがパートから帰っていたはずであることが原因だと思います。兄弟のいない私にとって、おふくろが家にいる、いないで家の中の雰囲気がまったく違っていたからです。

 

そして昨年(2005年)ついに私は40年前のあの日へ旅に出ようと思い立ちました。県の図書館へ、当時の新聞を閲覧に行ったのです。そして、私の長年の疑問は一気に氷解しました。

回答その1:私がこの特番を見ることができたのは、その前の番組のおかげでした。直前に、宇宙少年ソラン(再)を放送していたのです。ほかに見たいテレビ番組も無く、私はソランを見ていたのでしょう。(ちなみにその日は冬休みです)そして終了した後も、チャンネルを変えずにそのまま6チャンネルを(惰性で)見ていてこの特番に遭遇したに違いありません。

回答その2:私が住む徳島での放映時間は(徳島だけでなく、恐らく大阪圏では)、一般に伝えられている放送データとはまったく違うものでした。 図書館で見た地元新聞のテレビ欄・・・12月25日の中には「ウルトラQは怪獣の世界」の番組名はどこにもありませんでした。なら放映されたのは一体いつだ? そのタイトルを見つけたのは4日後の12月29日()。6チャンネルで朝10時5分からの放映でした。(ちなみに前述のソランは09時45分からの30分でした)

私の脳裏にあった、消えかかりながらも記憶の端に死に物狂いでしがみついていたあの感覚は、やはり間違っていなかったのです。(すっきりしたぁぁぁ!)

≪ちなみに、12月29日には・・・1ch(地元放送局)19:00忍者部隊月光 6ch(朝日テレビ)17:10スーパーマン 20:00コンバット 8ch(関西テレビ)18:15鉄人28号 18:55マイティハーキュリー 19:00ジャングル大帝 など、内外のアニメ・特撮の名作がズラリだ! 嗚呼、昭和40年よ!今一度!!≫

 

日本特撮番組の黎明期を支えた名作ウルトラQは、現在DVDはじめ多くのメディアで見ることができます。どんなに大好きな番組とも一期一会であったあの頃とは格段に幸せな時代です。 しかし、「ウルトラQは怪獣の世界」だけは相変わらず「幻の特番」の域を出ていません。ウルトラQのDVD−BOXにも、オフィシャルガイドブックにも、それに続くさまざまな書籍、映像製品にも僅か15分間の内容をじゅうぶんに伝えるものはありません。もうフィルムが無いのかなぁ。もう一度見たいなぁ。

いつか、どこかで奇跡が起きることを祈念しつつ、ウルトラQ本放送開始前の「夢の世界へのオリエンテーション」についてはここまでです。

「死ぬまでウルトラ!」

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