ネオ・ウルトラQ
初回放送:2013年1月12日(土)〜3月30日(土)21:00より(WOWOW) 全12話
ウルトラQが新たな脚本で再開されるという吉報は、全国のウルトラ者を大いに喜ばせたのではないでしょうか?ぱごすけもしかりです。嬉しかったし、待ち遠しかった。ましてヒロイン(職業はトラベルライター。いい感じです)役には高梨“茉子”臨さん。申し分ない配役です。 ただ・・・WOWOWのサイトで一部の怪獣やストーリーが紹介されはじめたあたりから少しずつ不安になってきました。「ウルトラQ dark fantasy」の落胆の記憶が脳裏をかすめたのです。(あのときのシリーズは、第1回の冒頭で天空からガラゴンが落下してくるところが最高潮でした) 結論を言えば「ネオ・ウルトラQ」はウルトラQのセカンド・シーズンたり得ませんでした。やはりこれは違うと思います。どちらかと言えば「〜dark fantasy」の続編でしょうかね?
理由1) ウルトラQは本来あくまで怪獣番組ですが、ネオに登場するのは決してウルトラ怪獣ではありません。巨大で、凶悪で、街を壊し、やがて科学者たちに斃される、あの怪獣たちではありません。(今後定番フィギュア化されるキャラクターは恐らくいないでしょう) @ニルワニエはただ歩いているだけで、人間に迫害される被害者側でした。 Aブレザレンは真面目な洗濯屋さん。(もしかしたらフィギュア化される?) Bヴァルカヌス星人はちょっと変な顔したどこかのおじさんでした。 Cマーラーはなんというか意識体のようなもので論外。 Dエピゴノイドは物静かでやさしいおにいさん、おねえさん達。 Eセーデガンはようやく現れた(かっこわるい)怪獣ですがすぐ死んじゃうし。 Fガストロポッドは予告編で期待したにもかかわらず大きなゴキブリみたいな扱いで福田博士やマヤちゃんのお父さんの方がよっぽど凶悪。 Gハタ・ギノールに至ってはチーマーじゃん。 H一番ウルトラQ怪獣らしかったのはプラーナかな?最後はオチャメにはじけましたね。 Iファルマガンはちょっと汚い足長おじさんみたいだし。 Jアルゴスもマーラーと同じで子供じみたことをもっともらしく言ってるつかみどころのない意識のカタマリみたい。 Kソーマは昆虫型宇宙人ガロ星人の亜種? ま、とにかくとうとう「怪獣」は現れなかったのです。(ネオの公式HPの「怪獣紹介」欄を見てごらんなさい。少なくとも3・5・8話は「なんで?」と思われるでしょう。)
理由2) 脚本・・・どうなのでしょう? たとえば野球のピッチャーで言えば「ウルトラQ」は初期の星飛雄馬のような直球一本の剛速球投手だったと言えます。しかしdark fantasyからネオにかけての作品群は、どれも変化球投手ばかりです。凄いストレートあっての変化球なのです。変わった曲がり方をするボールに「おお!」と驚いても、やはり変化球だけの投手は私たちの記憶に長く残りません。 ゴメスが、ナメゴンが、ペギラが、ガラモンが、そしてパゴスやゴルゴスがいてはじめてリリーの存在が際立つというものなのです。カネゴンのシニカルな可愛らしさが受け入れられるのです。 確かにヴァルカヌス星人のお話しはとてもキレの良い変化球でした。ドラマとしては面白かったです。セーデガンのラストはカネゴンのラストに一脈通じているようでしたし、プラーナはバルンガ的なハラハラ感がありました。しかしやはりシリーズ全体としてはウルトラQの後継作品を名乗るには「路線」があまりにも違いすぎたように思います。 2011年2月徳島県の北島町立図書館・創世ホールで公演を行った池田憲章さんによると、かつて円谷プロがウルトラQで「トワイライトゾーン」的な作品を世に送ろうとしていた時、ウルトラQを怪獣路線で行くようアドバイスしたTBSの栫井さんというプロデューサーがいらっしゃったそうです。 「マンモスフラワー」「変身」「悪魔っ子」といった作品と共に「宇宙からの贈りもの」のラッシュを見た栫井さんが、是非この怪獣路線を貫くよう円谷英二さんを説得したのだそうです。 新進気鋭の脚本家や監督を集めて挑んだネオ・ウルトラQでしたが「新たなウルトラQ」ではなく“あの”ウルトラQのセカンド・シーズンを標榜するのなら、各自の才能にすべてを委ねず「怪獣番組」のしばりだけは堅持して欲しかった気がします。 そしてもうひとつ。 ほとんどの回のストーリーがきちんと完結していません。お話しをほったらかして終わっています。 ニルワニエはなぜあの森へ向かったのか?太陽の黒点との因果関係は何だったのか?そもそも黒点極大期にどんな災いがおきるというのか?怪獣災害で亡くなったといわれる主人公の家族の声はどこから流れてきたのか? 福田博士はなぜあそこまでかたくなにガストロポッド退治に血道をあげたのか? プラーナは爆発して花が咲き、そして日本はどうなったのか? それ以外でも謎だらけ・・・な〜んにもわかりません。わからないことだらけです。 「これがウルトラQ」だなんて思って欲しくありません。元祖では、登場した怪獣は一の谷博士や淳ちゃんによってわずかでも解説されていますし、きちんと退治され(もしくは宇宙の果てへ去っていき)ました。悪魔っ子や1/8計画にしても、怪現象の根源は子供のアタマでもちゃんと納得して終わりました。 番組終了間際、2匹目のナメゴンが一の谷研究所の庭先で誕生した時「無限にある海水がこのドラマをしめくくってくれるにちがいない。〜」というナレーションで叩き斬るようにあのドラマは終わりました。(前述の池田さん談)大胆ですが、見事にきちんとドラマを終えて見せた金城さんのあの手腕を見せられて、しかも鮮明に記憶しているぱごすけには、一連のネオの終わり方というのはちょっと乱暴に過ぎるように思えてなりません。必殺技をかけておいて決してフォールにいかないプロレスの試合に似て、そこにはカタルシスが無いのです。
理由3) この番組は一体誰に見せたかったのでしょう? 元祖のように、ネオが50年後も繰り返し放送されることがはたしてあるのでしょうか?残念ながら私の答えは否です。 それはこの番組が決して子供たちを楽しませるために作られた作品群ではないからです。かつて子供の頃にウルトラQを見て育った大人たちに「懐かしいだろう?」とすり寄りながら作ったものがネオだという気がするのです。 しかし当初怪獣番組を期待した(ストレートを待っていた)ぱごすけは期待をはずされました(タイミングをはずされて空振りしました)し、怪獣市場のメインターゲットであるはずの子供たちははなからバッターボックスにも立たせてもらえませんでした。 そもそも12回にわたって連なるあの難解なタイトルやモンスター名はどうなのでしょう?最終回の「ホミニス・ディグニターティ」にいたっては訳もわかりませんし老化した私の脳みそでは記憶することすら困難です。
ネオ放送終了後、元祖ウルトラQのカラー版が放送されると決まったそうです。もしかしたらこれこそが元祖の「セカンド・シーズン」なのかもしれません。ウルトラQの後継者はやはりウルトラQなのです。 元祖のストーリーを現代においてリメイクしてみるというのも面白いかもしれません。パソコンやスマホなどの情報機器が驚異的に発達した現代においてあの怪獣たちはいかに暴れて、いかに滅ぼされてゆくのでしょう?(もしかしたら出現する前に封じ込められたりして・・・)俳優陣は違っても、セリフまわしやキャラ設定はできる限りオリジナルを意識したドラマをもう一度見てみたい気もします。もちろんできることなら佐原さん、西条さん、桜井さんでやっていただきたいですが・・・。ちょうどこの年、加藤剛さんの名作「大岡越前」をNHKが同じCALさん製作でリメイクしたように、です。主題曲もキャラ設定も加藤版を彷彿させてオールドファンとしては大いに楽しみました。名作ドラマのああいう楽しみ方もあるのだと実感しました。
さんざん言ってしまいましたが、ヴァルカヌス星人やプラーナの回は楽しめました。これが「ウルトラQ」というタイトルでなければどうということはないのです。dark fantasy2でもOKでしたよ。 そう、「ウルトラQ」でさえなければ。 特撮の神様・・・ぱごすけは今、怪獣に飢えています! |