特救指令ソルブレイン

1991年(平成3年)1月20日 〜 1992年(平成4年)1月26日  毎週日曜日8:00−8:30 テレビ朝日系で放映  全53話


WSPに続け。SRB颯爽と出動!

ギャバンを源流とするメタルヒーローシリーズは、最終的に全17作。(スゴイ!幼稚園くらいでギャバンを見ていた小さいお友達が栄光のメタルヒーローズ成人するまで続いているのです。巨人のV9なんてメじゃねぇゾ!)第9作目にあたるWSPは、シリーズ中盤にあって、その後のメタルヒーローシリーズの展開に大いなるエネルギーを与えたヒット作ではなかったのでしょうか?

このヒット作品を単発に終わらせず、シリーズとして同一路線を継承し、さらに発展させるためには何をどうすればよいか?当時の八手三郎さんたち(?)もおそらく喧々諤々の議論になったのではないでしょうか?

WSPは警視庁舎内に本部を構えていましたが、ソルブレイン(以下SRB)は東京工科大学そっくり(?)の特設基地を持ち、そこから専用ビークルなどの機材を搭載した大型救助母艦ソリッドステイツ1(SS1)が発進します。ウインスコードだけで一生懸命現場へ駆けつけていたWSPに比べて、その機動力は格段にアップしたわけです!(全長30メートルのSS1が、猛烈な垂直噴射しながら街のど真ん中にはたして着陸できるのかどうか、はなはだ疑問ではありましたが…)

隊員だって大幅に増員されていますよ。最前線のソルブレイバー、ソルジャンヌ以外にも、たとえばSS1を操縦する人、整備する人、発着管制を受け持つ人と、専用の基地を運営するだけでもそれなりの人員配備が必要です。WSPに比べて桁違いの大規模化です。細かいことを言えば、正木本部長の制服までも、黒一色であったものが紺のグラデーションが効いたおしゃれなものにかわりました。これほどの予算アップが行われたところを見ると、警察組織内外に、ウインスペクターの成果がよほど大々的に認められたことが推察されますね。

ホップ・ステップ・ジャンプと言いますが、これはまるで1号ライダーがイキナリV3を生み出したような飛躍的発展ですね。WSPの成功で、いろいろな遊び、というか思い切った試行が許される状態になれたのでしょう。SRBではふたつの顕著な特徴が認められます。

ひとつは今お話した組織の大規模化。とにかく派手なチームです。ソルジャンヌという、ヒーローとともに爆炎に飛び込んで人々を救出する「闘うヒロイン」の登場も作品に華を添えました。

いまひとつは、ストーリーのシリアス度がWSPに比べて増していることです。

被災者を救い、犯人の命をも救ってみせたWSP。そのエンディングはヘルメットを脱いだ香川隊長の飛び散る汗のごとく爽快感にあふれていました。しかしSRBではちょっとようすが違っていました。

救助できずに悲しい結果となってしまうエピソードがいくつかありました。

たとえばインターポールの密命を帯びたWSPが突然帰国して驚いた21〜23話。理不尽にも爆弾を埋め込まれた悲劇の人造人間メサイア(かつて殺人シュートで1号ライダーを退けた、あの堀田“トカゲロン”真三さんだっ!)は、西尾隊長の願いもむなしく爆発して果てました。人間であった時の記憶を取り戻し、ただただ家族に会いたい一心で日本へやってきたメサイアを、ファイヤーは非情にも抹殺しようとします。体内の時限爆弾が爆発したら大惨事になるからです。

頭ではわかっていても心が承服できない!

メサイアは自身の運命を嘆き、爆弾を体内に埋めた科学者を恨み、怒り、苦しみ、恐怖し、そして社会のすべてを呪います。それらはすべて、人が持つ感情なのです。

結局、最新の科学装備を誇るソルブレインも哀れなメサイアは救えませんでした。しかし、人の心を持つメサイアを文字通り人として認識し、人として救いたいと苦悩するソルブレイバーの姿に、ヤケをおこして多くの人々を道連れにしてやろうと逃げまわるメサイアも、ついに心を開いてひとり自爆します。誰ひとりとして巻き添えにすることなく。正木本部長が沈痛な声で言いました。「しかしおまえはメサイアの心を救ったのだ」と。

また、忘れてならないのがSRBの宿敵として何度も挑戦してきた悪の権化高岡隆一。彼は非道の限りを尽くし、最後までSRBを恨み、正義を否定してこの世を去ってゆきました。

「救えなかったっ!」

ソルブレイバーの悔恨とともに、あのラストはとてもやるせなかったです。

―――救う。

その言葉が持つ意味をさらに深く掘り下げて私たちに提示してみせたSRB渾身の3部作でした。前作のヒーローが再登場し、現役ヒーローと競演する華やかなエピソードは宇宙刑事シリーズにもありましたが、SRBとWSPの競演に加え、“人”の心を救うという重い命題に果敢に挑戦したメタルヒーローシリーズ屈指の名作であったと思います。

ただ問題は、そうした心の救済にまで話を掘り下げるのに、あれだけの大規模な装備は果たして必要であったのか?という疑問が残ることです。確かにSS-1を題材にしたエピソードなんかもいくつかありましたが(マギー審司のおっきくなっちゃった!じゃないけど、SS-1がちっちゃくなっちゃった!なんていうのもありましたねぇ。あの特撮はちょっと…う〜ん。 ×_×;)

「使えそうな」小道具がたくさんありすぎてちょっともてあましていたような感じが画面からも窺えたのですが、そのへんどうだったのでしょうか?大型母艦もたまにはじっくり見せとかないと、オモチャが売れないとか…まさかね。むしろ、見ごたえのある内面的なストーリーに引っ張られて、全体のイメージが少々重苦しくなってしまったかもしれません。SRBの真骨頂である「心を救う」シリアスなドラマ展開においては、ソルドーザーや巨大救急母艦、特設基地などのアイテムはエピソードのメインに据えづらいものがあったのではないでしょうか。

番組後半に、ゲスト参加していたWSPのファイヤーが、ナイトファイヤーとしてレギュラー参戦(もはやクラステクターではなくソリッドスーツヘビータイプです)したのも、その辺を払拭することが狙いであったのかもしれません。

WSPと同じ、あくまで明るく激しくストレートな勧善懲悪モノとして展開していたなら、ソルジャンヌやドーザーも含めたSRBの超豪華装備がもっと活かせたかもしれませんね。(方向性が間違っていたということは決してないと思いますよ)

SRBは日本各地で新たに設立される、救急警察組織の中心的存在になるべく各地へ転属してゆきます。共に死線を越えて戦った仲間たちともお別れです。笑顔でパリへ旅立ったWSPとはひと味違うエンディングでした。しかし、レスキューポリスシリーズから遡ること約四半世紀。かつて、空想特撮シリーズウルトラマンにおいて、颯爽と怪獣に立ち向かっていった防衛チームが、続くウルトラセブンにおいては「正義」の意味を掘り下げ、「侵略者」の定義を刮目したあげく、真の友であるはずの子供から「ウルトラ警備隊のバカヤロー!」という世紀の叫びを浴びせられることになったと同じように、SRBは命を救うという稀有なる命題をさらに深く、さらに正しく、さらに美しく追及した結果、夢の世界から逸脱し、子供向け特撮番組のタブーでもある「現実」のエリアに(ほんの少し)踏みこんでしまったのかもしれません。

敢えて申しますが、それはまぎれもなく名作の証しなのです。

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