特警ウインスペクター

1990年(平成2年)2月4日 〜 1991年(平成3年)1月13日  毎週日曜日8:00 - 8:30 テレビ朝日系で放映  全49話


シリーズ化を決定づけた名作WSP。その魅力のヒミツは?

 ぱごすけが本格的な特撮(ウルトラ)オタとしてカミングアウトしたのは平成の名作「ウルトラマンティガ」を観てからのこと。1996年のことです。幼い頃から体の奥深いところで脈々と息づいていたウルトラ者の熱い思いが、この作品によってマグマのように一気に表面に噴出(発病!)したのです。

ということで、1990年放映の「特警ウインスペクター」(以下WSP)は、ぱごすけ覚醒時には既に「過去の作品」となっていました。ということで、レスキューポリスシリーズは、もっぱらレンタルビデオのお世話になりました。ビデオ化されていないエピソードも多くあり、すべてを楽しめたのはごく最近、東映チャンネルでの放送まで待たねばなりませんでしたが。

 WSPを観て感じたことがふたつあります。

@描かれる事件がとてもリアルで迫力があったこと。

A隊長の香川竜馬や正木本部長はじめ、隊員たちが皆、熱血正義一直線という感じで気持ちがよかったこと。

@については、エピソードによって犯人がギャング団であったりマッドサイエンティストであったり悪徳警官であったりとさまざまなことが大きな要因であろうかと思います。宿敵となる悪の組織が無いということは見ていた当初は格別意識しておらず、後になって何かの評論で読み「ああ、そういえばそうか」と再認識しました。

この、WSPを筆頭とするレスキューポリスシリーズ3部作は、敵と闘うことよりも犯罪捜査に前半〜中盤のかなりの時間を割いています。特撮ドラマというよりも、刑事ドラマを見ている感じがしましたね。『必殺技で敵を粉砕して終わる』という、ある意味ではヒーローものの基本形が根底から覆されていて、かなり新鮮に思えたものでした。

とにかくやっつけない。終始一貫「救助」せずには終わらぬゾというかたくななストーリー展開。クライマックスでは敵の攻撃に耐え、ショックビームで武器を使用不能にしておいてハンドワッパーで逮捕して終わり。むしろ巻き添えをくって被災した一般市民や犯人自身らを命がけで救出するシーンの方が尺が長かったりします。(そこまで被害が大きくなる前に犯人逮捕せぇよ。って言っちゃダメ ^_^;)

しかしこの命題は、脚本的にかなり難しかったのではないでしょうか?その証拠に、シリーズ3作で出てくるアイテムは可燃性のものや爆発物がイ〜ッパイ!時限爆弾や誘導ミサイルや特殊燃料はモチロン。可燃性産業廃棄物やら大気圧変換装置やら、挙句の果ては地球上で起動させたら自爆するバリヤ発生装置(!?)とか、もう爆発させることを前提に考え出されたようなヤバいアイテムがてんこもり!(だって助けなくっちゃいけないんだもの ^_^¥)

その他にも、凶悪ロボットはタンクローリーを奪って突っ込んでくるし、運転手が気絶した迷走トラックは狙いすましたようにガソリンスタンドへ突っ込むしで、とにかく爆炎と崩壊の連続!(特撮的には、せっかくの見せ場をもう少し迫力ある映像で見せてほしかったという気持ちは残りますが)

なんとかお話を盛り上げようという作り手のご苦労が伺えるというものです。

それと、シリーズ3作全体で俯瞰すると、似たような展開のお話がいくつかあるのです。たとえば隊長が仲間から追われる立場になるパターン。WSPの香川隊長や「特救指令ソルブレイン」(以下SRB)の西尾隊長は記憶を操られ、「特捜エクシードラフト」(以下EXD)の叶隊長も指名手配されました。EXDではバリアス7初登場回で、ホログラムの少女(今や芸能界の台風の目?遠野なぎ子さん。彼女はジェットマンでもあのプレイボーイ結城凱を手玉に取っていましたね♪)を助けんと、部下の拳と耕作が銀行強盗の真似ごとをさせられていましたね。どれも緊迫の名作でした。

それから旧友が犯罪にまきこまれるパターンも繰り返し採用されていました。WSP秘密捜査官の小山久子はダメ人間の烙印をおされたかつての同級生を、なかばパニックに陥りながらも必死でガードしていましたし、SRBの樋口玲子も売れない落語家になった大学時代の友人を懸命に守りました。EXDでは大熊拳の空手のライバルで親友でもある男が犯罪に巻き込まれて苦悩するのを命がけで救いましたし、内勤の日向愛にいたってはNASA時代に親しかったロボット(なんちゅう設定やねん!)「デューク」と大もめにもめて、仲間に銃口を向けるわ自分も被弾するわでとんでもない大騒動になりました。

バイクルやソルドーザーなどのサポートドロイドが、自らの出自や父親探しで悩む姿を描く“ロボット人情モノ”もよくあるパターンのひとつでしたねぇ。

レスキューポリスシリーズには前述の他にも凶悪アンドロイドやら超高速ロボットやら個人用バリアやら食人植物やらと、さまざまな現実離れした荒唐無稽なSFアイテムが続々と登場します。宿敵の犯罪組織が存在しない分、そういった「小道具」でエピソードを派手にする必要があったのかもしれません。リアルとは言っても、実のところは究極の「何でもアリ」なのですが、そうしたSFフィクションにからめて親子の情愛や友情、人と人との信頼といったものが全エピソードの底辺にしっかりと流れていて、宮内“ビッグワン”洋さんおっしゃるところのヒーロー番組イコール教育番組という図式が見事に踏襲されています。何のてらいもなく正面から描かれるそうした熱い心がとても心地よく、荒唐無稽なアイテムの存在や、凶悪な犯人が改心する際に見られる少々短絡的なプロセスなどはあまり気にせず楽しめました。これは2作目SRB、3作目EXDにいたるまで、一貫して言えたことだと思います。

Aについては、宮内御大は言うまでもありませんが、WSP主演の山下優さんがとてもイイ感じだったことが最初に私を惹きつけた大きなポイントでした。鍛え上げ、引き締ったスリムなボディから漂う精悍さと、名前の通りの優しい笑顔が、隊長香川竜馬像をヴィジュアルとしてダイレクトに伝えてくれました。

特に印象的な彼の場面はふたつ。ひとつは第一回の初登場シーン。妹が育てる花を大切そうに覗き込み「今年も咲いたな」と満足げにつぶやくシーン。強く平和を望みながらも、犯罪の続発に心をいためる彼の姿が印象的でした。もうひとつは第7話「幸せ祈る聖少女」で、不良少年たちにからまれた小山久子の弟良太クンを庇ってみずからも窮地に陥ったゲスト主役のみゆきちゃんを助けるために、不良少年の鼻先へ威嚇のキックを放ったシーン。「そこまでだ!」圧倒的な力の一端を見せつけて有無を言わさず不良を撃退し、みゆきちゃんに「僕の友達を助けてくれて有難う。お礼を言うよ」と笑顔で言うのです。普通のドラマならあり得ないようなクサいセリフですが、香川隊長が言うとなぜだかとても自然なのです。

冗談を言ったり、すねたりヤケになったり、他人をうらやんだり妬んだりといったことが全く無い、ある意味彼自身がとてつもなく非現実的な存在なのですが、山下さんの笑顔が、香川竜馬にあふれる人間味を与えていたと言えるでしょう。男のぱごすけが見てもあの笑顔は素敵でした。

それともうひとり、秘密捜査官小山久子の存在です。レスキューポリスシリーズのヒロインたちは皆、魅力的な女優さんばかりでした。SRBの森“ソルジャンヌ”みつえさん、EXDの中村“日向”由利さんともに、特撮史にくっきりと美しい足跡を残された方々です。その中でもひときわ輝く存在が小栗“チャコ”さち子さん!綺麗な方です。

彼女が演じる小山久子の父親は正木本部長のかつての同僚で、レスキューポリス設立の原動力になった人物です。さらに新幹線の乗客を守って爆弾魔の犠牲になって壮絶な最期をとげました。その遺志をついで自らも警官、それもWSPの秘密捜査官になった彼女は、準主役とはいえとても重要な役どころなのです。普段は喫茶店のオーナーとして平穏な毎日を送っていますが、本当の身分は愛する弟にまで伏せられています。そんな悲しくも苛烈なさだめゆえか、彼女の瞳にはいつも何やら悲しい色が浮かんでいるようで目が離せませんでした。

99年に出版された雑誌「Cool Toys」Vol.7の特集「栄光のレスキューポリス再び!!」によりますと、山下さんは既に引退されているそうです。当時スーパー戦隊やメタルヒーローに出演された方々はまだまだ一般的には認知度が低く、舞台や声優へ活動の場を移した一部の方々は別として、番組終了後は滅多にブレイクすることなく引退されるケースが多かったように思います。こうした特撮番組の出演者がいわゆる「イケメンヒーロー」として俄然注目されはじめたのは(倉田“RX”てつをさんなんかもそうではありましたが)平成ライダーのオダギリ“クウガ”ジョーさんや要“G3”潤さん、戦隊では永井“タイムレッド”大さん、金子“ガオレッド”昇さんあたりからでしょうかねぇ。キレのある体技とやさしい笑顔の二枚目である山下優さん・・・引退の本当の理由は存じませんが、もしも売れなかったことが理由であったのなら、時代が彼に追いついていなかったとしか言いようがありません。残念なかぎりです。また、小栗さち子さんは、その後もCMで何度かお顔を拝見しましたが、今はわかりません。またあの清楚な微笑と是非再会したいものです。(2012年小栗さち子さんと“eo光”のCMで久々に再会できました。嬉しい!)

こうした特撮ヒーローを演じた役者さんたちが他の番組に出ているのを見た時はとても嬉しいものです。「ああ、ちゃんと活躍してくれていたのだ」と。それは、大好きだったあの作品が、役者さんとともに今も生き続けているような気持ちにさせてくれるからなのかもしれません。あの作品とともにあの役者さんも消えてしまった、などというのはとても寂しい気持ちになります。そういう意味では、EXDの叶隼人隊長役の影丸“レッダー”茂樹さんがウルトラマンティガでシンジョウ隊員役で出演された時は本当に嬉しかった。応援しましたよ。(円谷プロに移籍したのは正解でしたね。^u^\)

ファンというものは、大好きな番組と同じように、役者さんにも入れ込むものだと思います。だから一期一会なんて寂しすぎる。CMでも舞台でもなんでもいいから、息の長い活動をしてもらいたい。(勝手ながら)切にそう願う次第です。

さてさて、数あるメタルヒーローの中でも、始祖たる宇宙刑事シリーズとともに3年間の長きにわたって放映されたレスキューポリスシリーズ。近未来の社会で実際に起こるかもしれないハイテク犯罪を捜査して犯人を追い詰め、巻き添えにされた人々を災害から救うというテーマに正面から取り組み、その姿勢を貫くことに全力を尽くしたという好印象を受けました。第一弾WSPはおそらく視聴率もオモチャの売れ行きもなかなかに良かったのでしょう。途中で無理な路線変更などされることなく見事にエンディングまで突き進みました。

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