ウルトラマンダイナ

1997年9月6日 〜 1998年8月29日   MBS 毎週土曜日18:00 - 18:30(全51話)


どんな番組でも人気が高まれば、その世界観を引き継いで2作目、3作目が世に送り出されますよね。ウルトラマンダイナも前作ティガの世界観をストレートに受け継いでいます。すなわち、ティガの正統なる後継番組なのですね。ところが、後継番組であるにもかかわらず、その「色合い」というか「雰囲気」がまるで違います。(そうでなくては新生ウルトラマンを出現させる意味が無いわけですが・・・)

ダイナのシリーズは、宇宙開拓へと突き進むTPCやスーパーGUTSのエネルギッシュな戦いぶりが前面に押し出されていて、全体に小気味好い作品が多かったと思います。

その象徴的存在が主人公アスカと隊長ヒビキのふたり。アスカの口癖は「勝負はこれからだぜ」ですが、旧作の主人公ダイゴは、まず「〜だぜ」などという口の利き方はしませんし、アスカのように「うおおおお!」などと絶叫しながら変身したことはただの一度もありませんでした。とにかく単細胞的で熱いキャラクターなのです。(ただ24時間熱血ではなく、通常勤務の時はけっこうサボっているようでしたが)

隊長のヒビキもまた自らを「TPCの荒鷲」と呼ぶほどの熱血オヤジ。組織というものはその長によってカラーが決するものですが、イルマとヒビキの違いがまさにGUTSとスーパーGUTSの違いと言ってもよいでしょう。98年公開の映画『ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』で、ダイナを倒したクィーンモネラに総力戦を挑みながらも、頼りの陸戦メカが大破し、隊員たちがボロボロになって疲れ果ててしまった時、ヒビキは「まだあきらめるな。俺達にはまだこいつがあるじゃねぇか」といって自分の膝をパシッと叩いてみせます。最後のひとりになってもあきらめず戦う。メカがなくとも足がついてりゃ走れるさ。というわけです。旧作で現場の指揮をとっていたムナカタリーダーなら、「態勢を立て直す。いったん引け」と指示を出すのではないでしょうか。 隊員たちもヒビキ色に染まっています。後に副隊長となるコウダ隊員も、戦闘中たびたび「よっしゃぁぁ!」などと雄叫びをあげていますし、指揮官から指示を受けた時、旧GUTSのメンバーは「了解」と短く答えるのに対し、スーパーGUTSのメンバーは、半ば気合を入れるかのように「ラジャァ!」とサムズアップして答えるのです。(えげつない“夢オチ”だった第42話「うたかたの空夢」では、出撃前全員がうおお!と咆哮していましたなぁ。<^v^>  )

どんな困難にも退かず、ただ前進あるのみという、いわゆるフロンティアスピリットが劇中のバックボーンとしてしっかりと存在していましたが、ただただ勢いだけで終始していたわけではありません。ウルトラマンティガにも劣らぬ、いや、ティガではできなかった素晴らしいエピソードがあるのですよ。放送順にご案内しましょう。

深海開発に賭ける男たちのど根性とロマンを描く第23話「夢のとりで」

スヒュームに奪われた人工太陽の制御を奪還すべく南極の海底で死闘を繰り広げる 第25、26話「移動要塞(クラーコフ)浮上せず! 前後編」

“大の虫を生かすために小の虫を殺せるか”ヒビキからつきつけられた命題にコウダが挑む 第34話「決断の時」

円谷プロ久々の関西ロケ敢行!GUTSとスーパーGUTSのタッグがスフィア合成獣に総攻撃をかける 第35、36話「滅びの微笑 前後編」

ふるさと地球を目前にしてダイオリウスの脅威にさらされた宇宙生まれのスターチャイルドを救出するため、スーパーGUTSが決死の作戦に出る  第41話「ぼくたちの地球が見たい」

以上シリーズ中盤に放映された5作品は、ぱごすけ的には「ベストエピソードDVD」として発売して欲しいくらい気に入っています。(こういう、好きなエピソードをチョイスしてDVDにまとめて販売してくれるようなサービスってあったらイイですよねぇ)脚本、演出、演技、特撮、どれも映画を見ているような高い完成度でした。身震いしましたよ。もちろん今でも見返して感動しています。

その他にも、パワーアップして復活した宿敵ゴルザと霧門岳で再びあいまみえる 第43話「あしなが隊長」や、一瞬ホラーかと思いきや実はスラップスティックだった 第8話「遥かなるバオーン」、スペシャル版OVAでも登場して活躍したミジー星人の笑撃の苦闘を描く 第13話「怪獣工場」と続編第30話「侵略の脚本(シナリオ)」など、激闘編とギャグ編が入り乱れながら絶妙なバランスを生み出してきました。それこそがウルトラマンダイナを飽きさせない人気シリーズにしたのだと思います。

さて、ダイナは一体どこからやってきて、どこへ行ったのでしょう?ティガと同じ時間軸上に存在してはいても、ダイナは石像があったわけではありません。それともティガのピラミッドで壊された他の2体のように、器を失ってしまった光の巨人だったのでしょうか?その登場から謎に包まれていたダイナは、最終回でアスカもろともブラックホールの彼方へ消え去りました。その終焉は決して悲劇的に描かれてはいませんでしたので、ダイナ=アスカは死んでしまったとは思えません。しかし、それなら彼はどうなってしまったのか?「いずれ必ず帰ってくるさ」という希望的観測がなされていましたが、なんだか根拠の無い話であてになりません。ということは、ダイナは未来永劫ブラックホールの中なのでしょうか?これでははっきり言って死んだも同然ですよね。最終51話のタイトルは「明日へ」でした。確かに人類は、ダイナの犠牲によって再び明日へと歩き出すことができます。しかし当のダイナは?アスカは? いかにスフィアが強大な力で太陽系の星々を飲み込んでゆこうとも、ダイナとスーパーGUTSのタッグは最後には大勝利を収める!はずではなかったのでしょうか?そうでなくては、それまでの彼らの激闘は報われないではありませんか。

最後のシーン、アスカはお父さんと出会って光の彼方へ並んで飛び去りました。けど、ブラックホールの中で仮に父親と出会ったからといってそれがハッピーエンドと言えますか?100歩譲ってダイナがブラックホールに消えてしまっても、アスカは帰ってこいよ、と思ってしまうぱごすけであります。スーパーGUTSのメンバーの輪の中で、こずかれたり突っつかれたりしながら笑うアスカこそ、アスカ・シンなのですよ。ダイナミックなウルトラマンダイナのラストには、何やら物悲しい気持ちがつきまといます。残念です。

あと、シリーズ中あまり語られなかったアスカ隊員とリョウ隊員の関係も、最終章でいきなりクローズアップされてきて少々面食らいました(私はどちらかと言えばマイ隊員の方かと思っていましたし)

いずれにしても、映画でよくある(ダイハードやランボーやロッキーやエイリアンやターミネーターやロボコップなどなど・・・)娯楽作品としての“2”の役目は充分果たせたスマッシュヒットであったことは間違いないでしょうね。

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