ウルトラマンティガ

 1996年9月7日 〜 1997年8月30日 毎日放送 土曜18時〜18時30分


【名作激誕!】

ウルトラマン80の放送終了から実に16年の歳月が流れていました。ウルトラマンというキャラクターが、もう過去のものになってしまったのかとさえ思えていた時、テレビにウルトラマンが帰ってきたのです。(OVAや映画版としてはその間グレートやパワードなどの海外バージョンは存在しましたが)銀色のボディには赤と紫のライン、切れ長の目、ブレード状のフィンではなく、全体がティアドロップ型の頭部、額にはクリスタル、細身で精悍な肉体・・・。新生ウルトラマンは非常に完成度の高いルックスを有していました。その上、飛行に特化したスカイタイプ、格闘戦に滅法強いパワータイプ、そして通常のマルチタイプと3タイプに変化するという驚くべき能力の持ち主。それが、ウルトラセブンをも凌ぐ稀代の名作ウルトラマンティガなのです。この時私は37歳。息子と本放送を見ながら、ウルトラマンもついに親子二代か、と感慨にふけったものでした。

 

【GUTSがおるからや!】

名作を支えた屋台骨は、何といっても防衛隊GUTSの魅力溢れる隊員たちです。

シリーズ初の女性隊長となるイルマの凛とした美しさが、作品世界のビジュアルをしっかりと引き締めてくれました。ご主人を事故で亡くし、一人息子を姑に預けている彼女は、息子に対して良き母でありたいと、また、隊員たちの信頼に応えられる隊長でもあり続けたいと苦悩します。そんな彼女を息子のトモキ君はしっかりと理解し、慕ってくれます。またムナカタ副隊長以下のGUTS隊員たちは、イルマを唯一無二の隊長として心から信頼します。固い絆のイルマ組は、番組の最後まで見事に一枚岩たり得ました。ティガとその続編ウルトラマンダイナの成功の影には、イルマとヒビキというふたりの名隊長(もちろんキャスティングの勝利も含めて)の存在が間違いなくあります。

「隊長を信じて、隊長の命令に従う。それだけだ」副隊長ムナカタは、単なる上司としてではなく、イルマ隊長を女性としても敬愛している面があります。だけど、そんなことは隊長本人は勿論、他の誰にも言えやしません。面白いのは、当のイルマがどうもそこのところを気づいているふしがあるということです。彼女の方でも、(好きという感情を持っているかどうかは別にして)ムナカタを副隊長として信頼していると同時に、彼の自分に対するそういう気持ちを決して不快に思っていない。互いにとてもバランスのとれた大人のつきあいができています。番組スタート当初はちょっと地味な存在のムナカタリーダーでしたが、対ゾンビ怪獣シーリザーあたりから、高い作戦指揮能力を発揮し、現場の指揮官としての貫禄を見せつけてくれました。部下たちのヘルメットに対し、ムナカタはいつもキャップを着用しているという、小道具の細かい使い分けも、プロ集団GUTSを私たちに印象づけて効果的でした。ただ、わざわざバーへ行ってミルクを飲むのはやめた方が…。ドリルがなければ特撮じゃない!
進めピーパー!

大阪弁の天才発明家ホリイ隊員は、ウルトラマンでいうところのイデ隊員。新兵器を開発して困難な局面を打破し、複雑な状況をそれとなく視聴者に説明し(当然劇中では隊長や隊員たちに説明しているのですが…)3枚目キャラでボケたおして場をなごませる。ある意味主役よりも難しく重要な役割を与えられています。演技の下手な役者さんには到底任せられないパートではないでしょうか。私の印象では、ガゾートに食われそうになり、「こっち来んな〜!」って叫んだあたりからホリイ隊員(=増田由紀夫さん)のエンジンが全開になってきたように思います。

こういった群像ドラマ(スーパー戦隊シリーズもそう)では、各隊員を主役に据えたドラマが多く作られますね。ホリイ隊員の場合は印象深い作品が多く、ライバルでもあった友人がエボリュウ細胞を己が体に取りいれて怪獣化する「闇へのレクイエム」本格的なホラーの世界で、ちゃっかり恩師の娘とラブロマンスしている「霧が来る」そしてそれらふたつのエピソードがひとつに結実する「闇にさようなら」の3作は特に秀逸です。  ついには「霧が来る」で親しくなったミチルさんと結婚し、後に一男一女、つぐむクンみらいチャンというかわいい子供たちをもうけます。(ウルトラマンダイナ:滅びの微笑より) 二枚目のシンジョウでも現役アイドル(ジャニーズJr.)が演じるヤズミ隊員でもなく、こうした3枚目キャラが隊員の中でいち早く恋人と結ばれるようになるところなど、作品世界の懐の深さを感じます。

また、ダイゴ隊員の「墜落の友」シンジョウ隊員には自分のコネでTPCに入れた看護師の妹マユミがいて、彼女との兄妹愛が何度か描かれています。彼女の婚約者のプロレーサーがガゾートに殺されてしまう「幻の疾走」では、マユミ役の石橋ケイさんの熱演が涙を誘いました。また、「オビコを見た」では、ルックスを始め、結構自信家のシンジョウ隊員が実は「怖がり」であるという、思わぬ弱点が見えて楽しい回でした。しかし、最後には人間の一方的な開発で住む場所を失った哀れな妖怪「オビコ」に心から同情していました。好漢シンジョウに拍手!でした。

ヤズミ隊員は、若き科学者として状況分析を担当し、あまり現場へ出向くことはありませんでしたが、ジョバリエとクリッターふたつの異なる撃滅作戦が同時進行してゆく慌ただしい中で、シンジョウマユミと命の価値について激しく語り合う「うたかたの…」やタイムスリップによる時間のつじつま合わせを逆手に取り、淡い想い出を後味よく届けてくれる「時空をこえた微笑」の(ぱごすけ的には)超名作の2本に主演しています。ダイゴとはちょっとタイプが違うけれど、少年の面影を残す純粋な好青年でした。

光と一体化してティガに変身するダイゴ隊員。主人公です!演じるV6長野博さんのちょっとたどたどしい喋りが、おとなしい好青年であることを印象づけてくれます。GUTS隊員は皆、非常に個性的なメンバーでしたから、主役のダイゴ隊員がちょっと引いた存在であることがかえってバランス良く見えたのかもしれませんね。 ダイゴ隊員が中心となったエピソードは、当然ながら名作が目白押し!オビコ同様伝奇ものの「よみがえる鬼神」や超能力者の悲哀を描いた「拝啓ウルトラマン様」などは何度見ても素晴しい!「よみがえる〜」の錦田小十朗景竜は、後に川上英幸さん執筆のティガ外伝「白狐の森」でも再登場しているほどの隠れた名キャラクターとなりましたね。 そうそう。前述「オビコ〜」の赤星さんもそうでしたが、この回の郷田さん、平光さんの怪演は最高でした。怪物ランドの皆さんには、ティガワールドを随分華やかで楽しいものにしてもらっていますよね。

「ナルトもらうよ・・・」息ぴったりのショートコントを見せてもらったお得感いただき!でした。

 

【でもどうしていつもダイゴはティガに会えないんだろうね?】

「うわっ!レナはダイゴの正体を知ってるゾ!?」第46話「いざ鎌倉」のラストのことです。ヒロインがヒーローの正体を知っている。そして知っていることを隠している。これは私たち見る者にとっては驚愕の事実でした。ヒーローは最後の最後までその正体を隠し続けねばなりません。それは、彼自身と私たち視聴者だけの秘密なのです。それを、レナは見抜いていました。(ま、イルマ隊長もしっかり気づいていらっしゃいましたけどね。第44話「影を継ぐもの」エンディングでの隊長のダイゴを見る目・・・知ってる、知ってる!)一体いつ気づいたのでしょう?第5話の「あ、ウルトラマン・・・」あたりから彼女の心に疑問が芽生え始めたかな?第50話のエンディングの編集は、そのヒントになっているのでしょうか?とにかく、男はダメだね。鈍くていけねぇや。

 

【トラウマが消えてゆく!至福のシーン!!】

30年前、侵略宇宙人との戦いに疲弊しきったモロボシダンは、「行かないで」とすがるアンヌをふりはらってセブンに変身し、そして地球を去ってゆきました。「ダンは死んで帰ってゆくのだろうか?」ウルトラ警備隊員の血を吐くような言葉が子供の心にささりました。アンヌの悲しそうな目、血のにじんだダンの額の包帯・・・。心から愛する不朽の名作ウルトラセブンには、忘れられない悲しいシーンがつきまといます。

それを打ち破ってくれたのがウルトラマンティガ第50話「もっと高く! 〜Take Me Higher!〜」(テーマ曲のタイトルを冠するに相応しい!)のラストシーン。ファンの間ではあまりにも有名なダイゴとレナの「ラブシーン」ですが、私はこのシーンをどうしてもセブンのラストに重ね合わせてしまうのです。深読みのしすぎなのかもしれませんが、あまりにもいろんな要素が符合するのですよ。

@ダイゴとダンの本質は・・・

ティガ:ダイゴは光であり人である。(ユザレ談)つまり、光であるティガとしての務めが終われば、彼は人間なのです。

セブン:ダンは宇宙人であり、地球での務めが終われば、ふるさとであるM78星雲へ帰らねばなりません。

A時と場所は・・・

ティガ:明るく輝く金色の草原で正面から向かい合うふたり。頭上には抜けるような青い空が広がっていました。

セブン:夜の材木置き場、闇に包まれた中でダンはアンヌに背を向けました。

Bふたりの言葉は・・・

ティガ:ティガへの変身を解いたダイゴに、レナは「おかえり」と言葉をかけダイゴは「ただいま」と返しました。

セブン:背を向けてウルトラアイを構えるダンに、アンヌは「待ってダン。行かないで!」ととりすがりましたが、ダンは彼女の手をふりほどいて「アマギ隊員がピンチなんだよ!」と言い放ちセブンに変身。

C結末は・・・

ティガ:そして結ばれる二人

セブン:そして別れてゆく二人

あまりにも対照的なふたつの作品。私にはまるで、時を巻き戻したダンとアンヌが、もう一度結ばれるためにダイゴとレナに転生したのではないかとさえ思えるのです。いずれにしても、あの暗い夜の材木置き場にうち棄てられたダンとアンヌの無念も、私たちファンの悲しみも、あの清浄なる金色の草原で雲散霧消しました。まるで、嬉々として天上へ昇ってゆくクリッターのように。

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