ULTRASEVEN X
2007年10月5日〜2007年12月21日 TBS系列(毎日放送) 土曜 27:25 - 27:55 全12話
ウルトラセブン誕生40周年記念の07年は、ウルフェスをはじめ楽しいイベントが催され、ゲキレンジャーはじめ特撮作品の名作が数多く放映された素晴しい年でした。 そんな中、ウルトラ者の眠りを妨げるとんでもない作品が誕生しました。(眠かったよぉ〜) ULTRASEVEN X。 “僕たちの”セブンに似て非なる赤い超人は、記憶を失って迷走するジンの苦悩など我関せずとでもいうふうに、クールな闘いを繰り広げます。 都会のど真ん中でドタバタと取っ組み合いなどしません。高層ビル群に巨大な姿を現すや、光線とアイスラッガーで敵を瞬殺するのです。そう、僕たちのセブンの戦いっぷりにそっくりではないですか。まさしく宇宙人同士の“超越した”闘いではありませんか。 舞台は近未来をイメージさせるサイバー都市。そこで繰り広げられる侵略計画は、静かに、しかし着々と進められてゆきます。住民たちは誰も気づいていません。本当の侵略というのは、こういうふうに行われるものなのかもしれませんね。(都市の俯瞰はブレードランナーばりのSFなのですが、風景が団地や街並みに拡大されると、なぜかイキナリ“今”の世界になっちゃうトコロが何とも・・・) その恐ろしい侵略計画に立ちはだかるのは、ULTRASEVEN Xへの変身能力を有するジン、ケイそしてエス。DEUSの秘密エージェントたちです。彼らは顔も見たことのない上官の指令を受ける ウルトラ警備隊と違って、DEUSという防衛チームのメンバーはユニフォームを着用していません。無線機や光弾銃以外、ライドメカも所有していません。皆、あたかもフリーランスの保険外交員のように、指令ひとつで独自の作戦行動を開始します。地球防衛軍のような、地球を守るための絶大なバックアップ組織も持たぬ彼らは、まるで『死して屍拾う者なし』の隠密同心さながら、得体の知れぬヤツらのアジトへ決死の突撃をしかけるのです。しかし、ただひとつウルトラ警備隊とまったく同じ物が彼らとともに在ります。それは揺るがぬ正義の心と仲間への信頼です。メンバーが多かろうと少なかろうと、ライドメカがあろうとなかろうと、そんなことはジンたちにとっては大した問題ではありませんでした。 一見それぞれがフリーランスのエージェントのようでありながら、彼らはその心の中に、寸分たがわぬ共通の行動原理を持ち合わせています。『人間愛』です。自分たちが守るべき人間にとって、何が本当の益たり得るのか?誰を信ずるべきなのか?その問いに同じ答えを即座に出せる者同士だったのです。その一点において、彼らはまさしくウルトラの防衛チームでした。 記憶をなくした影の多い主人公ジン。ちょっとおどけた熱血漢ケイ。女性ながらクールなファイター、エス。そしてエージェントではありませんが、ジンの周囲に出没する謎の美女エレア。わずかな登場人物ながら、毎回侵略宇宙人と迫真の戦闘シーンを見せてくれました。 さて、公式HPにあった僕たちのセブンとXの関係について、ずっと考えていました。まったくの無関係なら、HPにわざわざあんな思わせぶりな記載はしないでしょう?その答えは、思わぬところから現れました。しかも信頼していたDEUSの驚愕の正体とともに! 前〜中盤までは侵略者を撃つ正義の組織であったDEUSが、後半徐々に正から邪へと移り変わってゆくのがとっても面白く、深夜枠の特撮番組らしいダークな雰囲気を楽しませてくれました。ジンたちを差配する公安組織DEUSの正体は、侵略者グラキエスでした。 究極の侵略者グラキエスは、ある意味見事なまでにこの世界を管理、運営していました。情報を活用した上で人間たちに平穏な日常とともに労働を与え、適度に消耗させながら生かしています。片や人間たちは、遠巻きにしながら自分たちに向けられている目に見えぬ銃口の存在など知る由もなく、中には遥かなる宇宙に思いを馳せ、異星人の宇宙船に乗り込んで旅立つ者もいはしましたが、大半は朝目覚めて夜眠りにつくまで、四六時中見張られた中で細々と暮らしているのです。 そんなグラキエスが新たなエネルギーを得るべく始めたAQUA PROJECTの開発途中で、偶然異世界へのゲートを発見します。それは、彼らにとっては勢力拡大のための絶好のチャンスであり“向こうの世界”に君臨する正義の使者を呼び覚ます破滅への序章でもあったわけです。 そしてULTRASEVEN Xは意外な結末を迎えました。憤怒の表情を持つ赤い巨人は、パラレルワールドの境界を越えてやって来た“僕たちのセブン”だったのです。次元の壁を越えるという“掟破り”を行ったせいで、セブンもジンも己の意識、記憶を失ったのです。朧の中で数々の侵略宇宙人を倒してきたのです。しかし最後の最後、世界を操る最強の敵グラキエスとの死闘の中で、彼らはついに己を取り戻します。 その強さったら! 情報戦でこそ敵わぬものの、頭でっかちの虫けら星人など、セブンの敵ではありません。ワイドショットの掃射であっけなく全滅してしまいました。 強いセブン。そして信頼と正義の心で結ばれたエージェントたち。世界は違えど、ここに繰り広げられたのは変わらぬセブンワールドでしたね。 それにしても、次元の壁を越えてきたセブンの声を聞いたとき、ぱごすけめはブッ飛びました。「ウオオッ!この声は森次さん!!」 やって来たのは僕らのセブンなのですから当然と言えば当然なのですが、やはり森次さんのお声は我々ウルトラ者にとっては特別なもの。(舘さん、それロンですっ! ^o^”) しかしサプライズはまだ続きます。ナ、ナント!?ご本人が純白のタキシードでご登場!!!!!!!!!オ、オオ!?アンヌ隊員もいるではあ〜りませんかっ!!!!!!!!!! セブンが自分の世界へ帰った後の出来事でしたから、あの湖畔の風景はこちら側の世界なのでしょうね。かつて悲しい別れを経験したふたりは、我々の知らぬ間に結ばれていたのでしょうか? 「帰ったよ、アンヌ」 「おかえりなさい、ダン」 まるでダイゴとレナのような会話が聞こえてきそうでした。 平成セブンでは他の男性と結婚し、ダンという名の息子を授かっていたアンヌ。ならばあのアンヌは、ダン(=セブン)を慕うアンヌの精神が実体化したものなのか、それともやはりこの世界もセブンお得意の新たなパラレルワールドなのか。いずれにしても、戦いを終えたダンは、静かに愛する“伴侶”のもとへと帰ってゆきました。 全12話のシリーズ全体がひとつの壮大な侵略計画であったULTRASEVEN X。どんなにSFチックでダークな世界を構築しても、やはりセブンの世界は温かい血のかよった人たちのストーリーでありました。 これでイイのだっ!死ぬまでウルトラ!! |