化物語(バケモノガタリ)

2009年7月〜2009年9月 毎日放送 土曜深夜 アニメシャワー他 全12話(+Web配信3話)

「化物語」原画展 2010年8月10日〜9月12日 於:ufotable Café TOKUSHIMA


【綺麗な絵にひと目惚れ】

とにかく絵が綺麗でした。

私はアニメ作品に対してはひと目惚れするタイプなので、オープニングの直江津高校正門前のシーンを見た瞬間、この作品に対する期待値は一気にハネ上がりました。そして羽川委員長のスカートがふわりと舞い上がり、かわいいおパンツがドアップになった瞬間、これからの何週間かがきっとぱごすけにとって幸福なものになると直感したのです。(いや、おパンツが重要なのでは・・・ない・・・と思う)

公式HPに投稿していただいた壁紙です。
猫に魅入られてますなぁ。冴えない高校3年生の阿良々木クンが、自身の周囲に現れる『怪異』による事件を、忍野さんの助力を得て解決してゆくという話ですが、どちらかといえば怪異そのものよりも、その怪異にとりつかれてしまった少女たちの内面にスポットが当てられているために、ただのドロドロした伝奇モノになっていない、ライトウエイトの青春譚仕立てになっているのが気持ちよかったです。(重たいアニメはどうもね)

【アホな好青年、阿良々木クン】

この作品には、主人公の阿良々木クンと深く関わるふたりのヒロインが登場します。

ひとりはこの作品において絶対的ヒロインの座に君臨する戦場ヶ原ひたぎサン。ツンデレ(ツンドラ?)の具合がほど良くて好感が持てます。暴言がキツければキツいほど、阿良々木クンに対する彼女の想いが浮き彫りにされてゆきます。まるで餡子に入れたひとつまみの塩が甘みを引き立てるかのように。

もうひとりは「裏ヒロイン」とでも言えばよいのでしょうか、阿良々木クンの精神的支柱として、情報源として存在する羽川翼委員長。秀才でプライドが高いひたぎサンをして「レベルが違う」「本物」と言わしめた超天才少女です。しかも絵に描いたような模範的高校生。

このふたりの対照的な美少女の間で、阿良々木クンはあくまでマイペースです。いや、もちろん真宵チャンやら駿河サンやら撫子チャンやら、困っている人を全力で助けようとしてしまう彼は、基本的に他人に振り回される運命を背負っているかのような男だし、ひたぎサンと一緒にいる間も彼女の奔放な言動にしっちゃかめっちゃかにされてしまうのですが、それらはすべて「彼のペース」なのではないでしょうか?

夜のコンビニでエロ本を買いこみ、駿河サンのブルマとスク水を後生大事に握りしめる彼は、至極健全かつフツーの高校生です。(ま、普通は羽川委員長に指摘される前にカバンにしまうだろうけど…アホだなコイツ)それでも友人を助けるためには自己犠牲を厭わぬ彼(原作ではキスショットのために命まで投げ出したのですから…アホだなコイツ)、それこそ怪異級のごときやさしさを持つ男です。ひたぎサンが惚れるも道理。彼女の父親が初対面で「娘を頼む」と頭を下げるもまた道理です。好漢阿良々木暦、どうして今まで彼に友人がいなかったのでしょうね?(やっぱアホだから?)

【原作を読ませるためのアニメ?】

アニメ以前の重要なエピソードが語られるこの作品。
ファン必読です!それにしても、アニメ版しか見ていなかった当初、ぱごすけはてっきり羽川サンこそが阿良々木クンの彼女だと思っていましたよ。いや、実際羽川サンの方では阿良々木クンのことを間違いなく好いています。自分の好きな彼がひたぎサンとつきあうことになっても平然としている彼女の、まるで天使のような立ち居振る舞いに不自然さすら感じていたぱごすけですが「つばさキャット」のエピソードを見て、ああナルホドと心のそこから納得した次第です。ストレスは怖いね〜(^_^;)

で、第1回放送分のオープニングの謎と、羽川サンとの関係の謎をどうしても解きたくて『傷物語』を読んでみました。ふたつの謎についてはとてもスッキリしたのですが、これほどのストーリーを敢えて割愛してスタートしたアニメ作品の懐の深さにはあらためて驚嘆しました。いやむしろ、キモの部分を隠すことで、観る者に原作に対する興味というか、読みたいという欲求を抱かせる仕掛けが施されていたのではないでしょうか?

このアニメ、原作の壮大なプロモーションビデオだったのですね。(開巻劈頭ぉ〜 ◎o◎;)

【ラストシーンに涙せよ】

ホチキスやらカッターやら鋭利な文房具で武装していたひたぎサン。担任の先生やお父さんが言うように、阿良々木クンと出会ってから彼女は変わってゆきます。

かつて不敵な笑みを浮かべて「戦争をしましょう」と通告した彼女は、最終話のラストで、遠い昔両親と共に見上げたという満天の星を阿良々木クンに披露し、これが「私があなたにあげられる全部」だと告白します。若い心にトラウマを残すような不幸な出来事によって心を閉ざしたひたぎサン。まだまだ全開にはできていないにしても、何とか愛する彼のために自分の建付けの悪い心のドアを一生懸命開け放とうとします。

「キスをします・・・キスをして・・・いただけませんか・・・」相手のために言葉を選びながら精一杯語りかけるひたぎサン。ぎこちないふたりの愛を包み込む夜空いっぱいに輝く星々。その光の隙間を埋めるようにSupercellが歌うエンディングテーマ「君の知らない物語」が流れます。

♪〜(略)あれがデネブ、アルタイル、ベガ 君は指さす夏の大三角 覚えて空を見る(略)真っ暗な世界から見上げた夜空は星が降るようで いつからだろう君のことを追いかける私がいた どうかお願い 驚かないで聞いてよ 私のこの想いを 〜

大人びてはいても彼らはまだ高校生です。後姿だけとはいえ父親が登場すると、対比として彼らの幼さが際立ちます。若い彼らの将来に何が待ちうけ、彼らの清らかな気持ちがどう変わってゆくのか、誰も知るところではありません。しかし、少なくとも現在のふたりの気持ちに心からの祝福を捧げ、その前途に幸多かれと祈らずにはいられないのです。

怪異こそ出現しなかったものの、私たちにもかつて間違いなくあった「あの頃」の「あの気持ち」に触れて、心地よい涙を流すのも一興であります。

← 劇場版仮面ライダーディケイド仮面ライダーW リターンズ →